三田矯正歯科ブログ

2019.06.23更新

G20を目前に控えているため厳戒体制の中、本日は大阪市中央公会堂で開催された第27回日本成人矯正歯科学会大会に出席してきました。

今回の大会はメインテーマ「次世代の矯正治療」〜歯科矯正医療における3Dデジタル技術の行方〜というだけあって、プログラムの大多数がデジタル技術の矯正治療への応用に関するもので、とても興味深い講演ばかりでした。

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どの業界でも、デジタル技術の進歩と応用は目をみはるものがあり、矯正歯科治療もここ数年のデジタル化への波は凄いものがあります。ただ、デジタル化が進めば進むほど、正しく使える知識の習得と、扱う医療人のアナログ的要素がより重要になってくることの再認識ができました。

その中でも私が個人的に楽しみにしていた講演が、昭和大学歯学部歯科矯正学講座教授 槇宏太郎先生の特別講演『コンピュータ・シミュレーションに欠けているもの』でした。以下抄録を抜粋。

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最近、デジタル技術の矯正臨床における応用が拡大しつつあります。 しかし、臨床では、その有用性ばかりではなく、欠点をも知ることが、次世代への発展の足がかりになります。 本講演におきましては、下記のような企業や技工所が提示してくれるコンピュータ・シミュレーションに欠落している情報を列挙して、その必要性を解説するとともに、今後の展望を紹介させて頂きます。

1)歯根の形状や位置、歯軸の傾き

2)歯周組織の形状、代謝活性の程度、矯正力に対する反応性

3)顎骨の特徴、成長方向、成長量

4)固定源の強さ

5)装置装着時に負荷される荷重の大きさと領域

6)装着時間を正確に評価する手法

その槇宏太郎先生が、止むを得ない事情により欠席となり、知り合いの先生が代わりに講演をされて驚きましたが、講演内容はとても為になりました。

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こちらは第2会場で開催されていた招待講演。会場に人が入りきれずに講演内容をモニターしている別の部屋での拝聴となりました。皆、時代の流れに取り残されないように必死なのでしょう。

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今回の会場:大阪市中央公会堂ですが、国の重要文化財です。赤レンガが印象的なレトロの建物で、日曜日ということもあって観光客も多かったです。これはiPhone撮影。夜はもっと綺麗だと思いますし、堂島川と土佐堀川に囲まれた中之島自体が魅力的な夜景撮影スポットと思われましたが、それはまたいずれ機会があれば。

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そうです、いつもの学会や講習会後のお約束、一眼レフでの撮影は今回はありませんでした。実は私、それどころではない程忙しいのです。それはいずれまた報告するかも知れません。

 

投稿者: 三田矯正歯科医院 三田浩明

2019.06.05更新

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誤解を生じないよう、『成長期反対咬合(受け口)の考え方 - その1』を先に読まれてから、この記事を読んで頂ければ幸いです。

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 前回、一見同じように見える反対咬合でも、

(A)骨に問題があるか (B)歯だけの問題か。

(A)の骨に問題がある場合にも(a)下顎の成長が強い場合と(b)上顎の成長が悪い場合に分けられ、(a)と(b)の混在型もある。

(B)の歯に問題がある場合にも(c)下顎の前歯が前方に傾斜している場合と(d)上顎の前歯が後方に傾斜している場合に分けられ、(c)と(d)の混在型がある。

大切なことは、上記(a)〜(d)のどこに問題があるかによって、最適な治療開始時期も使用する矯正装置の種類も予測される治療期間も異なってくる。

ということをお伝えしました。

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それぞれに対して、もう少し解説していこうと思います。

(B)の歯だけの問題

単に前歯の傾きだけによる受け口であれば、全て大人の歯に生え変わってからでも治療は可能です。しかし、最初は前歯の傾きだけの問題であっても受け口を放置することで骨格的な反対咬合に移行してしまう場合もありますので、成長期に反対咬合の改善を行っておくほうがベターです。

(b)上顎の成長が悪い場合

上顎の骨は、概ね8〜10歳くらいまでに80%以上の成長が終了してしまいます。この時期を過ぎてしまうと上顎はもう大きくならないので、それより以前に上顎骨前方牽引装置を主に夜間使用して上顎を引っ張り出す治療が必要になります。この時期までに前歯が逆に噛んでいると、上顎骨が成長するべき時期に成長できず、第二次成長期つまり身長が伸びる時期に下顎も伸びるため、上顎骨と下顎骨の前後的ズレは悪化してしまう傾向にあります。

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学校の授業で習ったと思いますが、スキャモンの発育曲線です。人間の臓器の成長は大まかに分けて4種類に分類され、上顎骨は神経型に近い発育をします。下顎骨は一般型に近い形で発育します。同じお顔の中にある骨でも、上顎と下顎では発育する時期が全く異なるということです。

(a)下顎の成長が強い場合

下顎の骨は、身長が伸びる時期に伴い大きくなります。男子では概ね中学校2年生〜高校生、女子では小学校高学年から中学校1年生の頃です。すなわち、男子と女子では、下顎が大きくなる時期が違うことに注意が必要です。

私が平成元年に大学病院の矯正科に入局した当時は、下顎骨の成長が強い成長期のお子様たちに、『チンキャップ』という顎あてを使用してもらいましたが、現在この『チンキャップ』に対しては否定的な見解が殆どです。身長が伸びている人を頭の上から押さえても押さえきれないのと一緒で、下顎が伸びてしまう人に顎あてを用いても、(1)一時的に治ってもいずれまた下顎が伸びてしまう(2)成長する力は変わらないので、無理に抑えれば下顎が側方に偏位する(顎が歪む)(3)下顎の関節を圧迫し続けるため顎関節症を引き起こしやすい などの問題が起こりやすいだけで成長は止められないことがわかってきたため、『チンキャップ』などを用いた下顎の成長を押さえ込むという治療は殆ど行われなくなっています。

それではどうするのか?

まだ成長期であれば、下顎の成長が強い場合でも上顎骨の前方牽引を行います。長い方の下顎に合わせて上顎を成長させるのでナンセンスに感じるかもですが、他に方法がありません。先に上顎を成長させてしまい、上の前歯が下の前歯を正常に覆うような状態を作り、下顎が過成長を起こしにくい状態にします。あくまでも下顎が伸びにくい環境を作るだけですので、「成長しにくい状態=成長しない」ではありません。成長期初期に上顎骨の前方牽引を十分に行えたとしても、第二次成長期に下顎が過成長してしまう場合もあります。そして、短いものは長く出来る可能性がありますが、一度長くなってしまった骨は外科手術をする以外には短くすることが出来ません。つまり、成長期も後半になればなるほど長くなった下顎に対して上顎をより前方牽引しないといけなくなるので、上下の顎骨とも出た形になってしまうか、上顎を追いつかせることが出来なくなり反対咬合が治らなくなります。前者の場合には、上下左右1本ずつ計4本の歯を抜歯して上下前歯を後退させることにより、上下顎骨自体の突出を目立たなくするカモフラージュ治療となります。後者の場合には、歯の移動だけでも許容範囲であれば、上顎前歯を前方に傾斜させ、下顎前歯は後方に傾斜させて反対咬合を治す手段もありますが、下顎自体の突出感は改善できず、前歯も骨に対して無理な傾斜角度になるため、長期的に安定することは難しいです。根本的に治すのであれば問題がある下顎骨自体を短くする外科手術を用いた矯正歯科治療となります。

 

治療の開始は早い方が良いの?

土台となる顎の骨に対する治療は早く始めた方が良い場合が多いのですが、全ての永久歯が生え揃ってから行う本格矯正歯科治療の開始時期は慎重に検討する必要があります。骨の成長が止まっていない間は、下顎の位置が変わる可能性がありますので、歯の移動中に土台がズレてしまうと歯の移動をやり直さなければいけなくなります。つまり、早く本格治療を始めたから早く終わるわけではなく、下顎の成長が残っている間は歯に装着した装置が外せなくなってしまい、早く始めたが為に長期間の本格矯正治療のための装置装着を余儀無くされる場合があります。骨格性反対咬合の方の本格矯正歯科治療は成長が止まってから行うべきです。

そのため考えないといけないこと

3歳児健診などで反対咬合の指摘を受けて当院に初診相談で来院される方がいらっしゃいます。数年前から必ずお伝えしていることがあります。仮に骨格性の問題があって治療を早く開始した方が良い場合でも、治療の終わりは15〜18歳になる可能性があります(経過観察期間も含む)。そのときに院長が何歳になっているかも計算して、医院選びの参考にしてくださいね(^^)

 

 

 

 

 

投稿者: 三田矯正歯科医院 三田浩明

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