矯正歯科界に激震そして未来
2020.09.30更新
本日9月30日は、某歯科材料メーカーで従来の矯正材料を注文できる最終日となります。
矯正歯科界に激震が走ったのは8月16日。そのとき当院にも届いた矯正材料メーカーの大手である某社からの郵送物は行方不明になってしまいましたが、そこには『Traditional Orthodontics事業から撤退』という衝撃的な文言が記載されていました。その後、8月31日にも郵送物が届きました。
要するに、透明マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置などのデジタル矯正歯科事業に特化するため、従来のブラケットとワイヤーで治療を行うような矯正歯科材料は供給しませんよ。ということです。当院でも、1期治療(永久歯が生え揃っていない時期)で前歯に装置を装着する必要がある場合には、このメーカーの審美ブラケットを使用していました。何よりも、このメーカーは(今では海外資本の会社に吸収されてしまいましたが)以前は日本を代表する老舗メーカーで、歯科医師なら誰でも学生実習の際に、このメーカーのSTロックという装置を金属バンドにロー着しているはずです。それが今後は存在しなくなります。
当院に関しては、ブラケットは他のメーカーへの切り替え、STロックは当院では元々使用していないということで、当面はさほど混乱しないと思います。しかし問題は別なところにあります。追従するメーカーが出てくるのでは?という不安です。矯正歯科を専門に開業している歯科医師の団体では、この某社に意見書を提出する動きもあるようですが、正直効果はないかと思います。希少難病の医薬品は開発が進まないと何かの書籍で読んだことがあります。そこに投資しても利益が少ない、研究費開発費だけで赤字になるようなことがあれば、研究開発に乗り出す企業が現れにくいからだそうです。企業も利益と社員の生活は守らなければなりません。
どれだけデジタルが進んでも、透明マウスピース型カスタムメイド矯正歯科装置が進歩しても、従来のブラケットとワイヤーを用いた矯正歯科装置が不要になるはずはないと思っていましたが、需要が少なくなれば、あまり売れない物の在庫を抱えたり開発する余裕はなく、多くの企業が撤退していくのは止むを得ないのかも知れません。
どれだけ嘆いても、悲しんでも、時代の流れには逆えず、5年後10年後を見据えれば、デジタルを応用した矯正歯科治療の質を高めていくしか無さそうです。
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